欧州形鉄道模型紹介

模型車両を中心に、実車の情報を含めて紹介します。

ÖBB 694.692

ÖBB Reihe 694は、元Preußischen StaatseisenbahnenのT 16.1で、貨物用のタンク式機関車である。

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94.1292

T 16は、Preußischen StaatseisenbahnenとDRGから繰り返し発注され、1913年から1924年の間に全部で1242両製造された。

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94.1538

車輪配置は、E h2t、全長12660mm、動輪径は、1350mm、車両重量は84.9tで軸重は17t。石炭を3t、水を8㎥搭載し、出力は787KW、最高速度は60km/hであった。

1925年になり、DRGの形式番号Baureihe 94は、94.517より後ろで分類され、T 16.1は、94.502~1380と94.1501~1740とされた。元のT 16は、Baureihe 94.2に分類された。

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94.503

アルザス・ロレーヌの連邦鉄道(Reichseisenbahnen in Elsaß-Lothringen)のT 16.1(94.1378~1380)の3両は、ドイツ国内に残った。1935年には94.1381~1384が増備された。

第一次世界大戦後のドイツの補償のため、ポーランド国鉄にいくつかの94のコピー機が渡った。これらは第二次世界大戦によりドイツ連邦に組み込まれることになって94の続番(1385~1416)が与えられた。

1945年以降、フランスとベルギーにあった94.1801~1810は、ドイツにおいてもそのままの機番が使われた。また、Halberstadt-Blankenburger Eisenbahnにいた94(T 16.1)は、1950年に94.6776という機番で組み込まれた。

1968年には60両がDBに組み入れられ、Baureihe 094と改称された。1970年のDDRではBaureihe 94.1とされた。なお、DBでは1972年に、DRでは1975年に終焉を迎えた。

Baureihe 94.1の功績は、重貨物列車の容易な牽引と、高い粘着牽引力により、急な勾配区間でのラックレールを不要とすることが出来たことで有名である。

なお、Baureihe 94.1が退陣した後は、ディーゼル機関車のBaureihe 118を急勾配重貨物用にエンジンを作り直して対応させたとのことである。

第二次世界大戦の後、オーストリアには43両のBaureihe 94.5-17が残った。このうちの大半は、戦争補償により、MÀVと SŽD に渡され、残った14両がÖBB Reihe 694として登録された。

ÖBBでは主に重量貨物の操車(入換機関車)として使われた。1953年には3両減、1954年に1両減、1960年に3両減、1961年に1両減、1964年に1両減となり、1966年に最後まで残っていた2両が退陣し終焉となった。
なお、いくつかの機関車は、工場内入換用として、また製鋼所用の機関車として売却された。

ドイツ国内には、11両の保存機(94.002、249、1184、1283、1292、1538、1616、1692、1697、1730、2105、うち1292と1538は動態保存)があるが、オーストリアでは保存機があるかどうかは不明である。


モデルはFleischmann製の製品番号4093Aで、いわゆるオーストリア向け(Österreich Sondermodell)である。現在は絶版品となっている。

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Fleischmann 4093A

製品は前オーナーによりウエザリングがされていて、見た目は綺麗ではないが、実際に編成を組んで走行させたときには、より実機に近く雰囲気はとても良く感じる。f:id:eumodel:20190525014003j:plain

全長146mm、重量は322gとずっしりと重く感じる。

発売時期は正確にはわからないが、DB仕様の製品番号4094が1978年発売なので、DR仕様の製品番号4093は1977年頃と思われる。ÖBB仕様は、それらよりも相当遅れて1980年代の半ば以降と思われる。いずれにしろ発売時期の関係でDCC対応とはなっていない。f:id:eumodel:20190525014108j:plain

駆動系は、モーターはFleischmann標準の横置きモーターを採用しているが、車輪への駆動は通常のタイヤ脇のスーパーギアを介する方法ではなく、第3軸の中に組み込まれたスーパーギアに伝達する方式を採用している。他の軸(動輪)へは、ロッドにて回転を伝えている。f:id:eumodel:20190525015019j:plain

添付画像でもわかる通りウォームギアを使わずにギア比を稼ぐため、多くのスーパーギアを組み込んでいる。f:id:eumodel:20190525014651j:plain

車体はボイラーとキャブ回りが一体となったプラ製の上回りと、メインウエイトおよびモーターを含む下回りの3パートに分割できる。上回りのボイラー部分にはサブウエイトが組み込まれている。重量は上回りが21g、メインウエイトが127g、下回りが143gである。f:id:eumodel:20190525014251j:plain

動輪は上下動に対しては固定であるが左右動に対しては、第1,第2軸が1.5mm、第3、第4軸が2.0mm、第5軸が2.5mm移動できる。またロッドが第1~第3と第3~第5軸と分かれ(第3軸は共通)ている関係で、第1軸と第5軸までのスパンが70mmと長い割には急曲線の追従は問題ない。f:id:eumodel:20190525014834j:plain

集電は第1~第4動輪のタイヤ内側の両極から集電している。集電子は動輪の左右動に追従できる構造となっているため、ポイント等の死電区間もスムーズに走行できる。なお、トラクションタイヤは装備していない。

ライトは、電球タイプの球が前後に1個ずつ装着され、前後とも同時(前後とも2灯)に点灯する。f:id:eumodel:20190525014325j:plain

カプラーは最初からProfiタイプが装着されていた。このカプラーはポケットタイプ(NEM652)ではなく、Fleischmann標準のピンタイプなので、別売りパーツとして販売されているピンタイプのNEMホルダーがあれば他社製品とも交換できる。f:id:eumodel:20190525015130j:plain

牽引力は、車重があることと5軸の全部が駆動されているため、トラクションタイヤが無くても、相当力強く感じる。

当社の旧テストコース(全長約5.2mのエンドレス。曲線部はR420。直線部に1mの長さで4%の勾配がある線路)では、前進方向では2軸とボギーの混合貨車15両=編成長2mを、後進の場合は貨車17両、編成長2.4mを勾配区間で引き出すことができた。


当社では、クラブを通じて捜していたが、2003年6月に入手できた旨の連絡を受け、2003年7月に受け取ったものである。