欧州形鉄道模型紹介

模型車両を中心に、実車の情報を含めて紹介します。

ÖBB 64.311(DRB Baureihe 64)

ÖBB 64は、DRGでBaureihe 24のボイラーとシリンダーを利用して製作された客車牽引用のタンク式機関車のBaureihe 64である。製造は1928年から1940年までで計520両誕生した。

テンダー式のBaureihe 24(出力677kW)と比べ、テンダーを牽いていない分、出力も大きく(700kW)、全長は12400mmで割と小型であるため、後進の運用も容易でローカル線では重宝された。

全体のフォルムも均整の取れた姿でファッショナブルな女性のヘアーカットの様だとして"Bubikopf"(日本語訳:頑固者・石頭)というニックネームが付けられたといわれている。

ÖBB 64.311は、第2次世界大戦後の1945年にオーストリアで生き残っていた唯一の64であった。この311号機は戦後処理として、そのままオーストリアに残り、たった1両ではあったが、ÖBB Raihe 64として登録された。

ÖBB 64.311

1954年に事故で大破したものの、修復され1956年まで活躍したが、1957年には形式抹消され、現存していない。

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モデルは、Fleischmann製で、製品番号は4063A。DBバージョンのオーストリア向け(Sondermodell)製品である。発売時期は未確認であるが、1978年のカタログにはDBバージョンの064として(製品番号は4063)掲載がある。なお、現在は絶版品となっている。

Fleischmann 4063A

全長は143mm、重量は291gである。

FL 4063A

動輪とモーターが組み込まれた足回りはメタル製で、裏側からのブレーキパット(ダミー)部分はプラ製である。また、先従輪の軸受け部分もプラ製。車体(ボイラー、ウオータータンク、キャブ等)はプラ製で、その車体内側の動輪第1軸と第2軸の上側付近にウエイトが付く。

モーターはFleischmannの標準型で、全部スーパーギア(平ギア)にて動輪の第3軸を直接駆動する。第1軸と第2軸へはロッドにて回転を伝える仕組み。なお、トラクションタイヤは装着されていない。

FL 4063A 下側から見ると

集電は、片側絶縁タイプの動輪3個から採っていて、片側は軸部に直接接触子を使ってフレーム上に流し、絶縁側はフランジの内側を擦るようにして3輪全部から集電している。

この車輌の場合は、動輪の軸受けは固定式で車軸を通してから片側(絶縁側)のタイヤをはめ込む方式を採用している。そのため車軸と軸受けの相性は抜群であるが、上下動は無く、また先従輪からは集電していない関係で無電区間の長いポイントレール(FleischmannのProfiでは問題がないが、Rocoなどでは、ややぎくしゃくする場合がある)

ライトは、電球タイプの球が前後に1個ずつ装着され、前後とも同時に点灯する。なお、当方の通常走行電圧では暗くぼんやりとしか点灯しない。

正面と裏面

車重はRocoの同じ形式のものと比べ、この製品の方が100g近く重いが、トラクションタイヤを装備していない(車軸が固定式で、しかも動輪3輪からのみの集電であるためトラクションタイヤを装着できない)ため牽引力は思ったほどない。

側面

当方のテストコース(全長約5.2mのエンドレス。曲線部はR420。直線部に1mの長さで4%の勾配がある線路)では、前進方向では2軸とボギーの混合貨車11両=編成長1.4mに留まった。後進の場合は貨車12両、編成長1.5mであった。

カプラーは、欧州標準型のループカプラーを採用。しかし、通常の差し込むタイプで無く、ロックピンを使うタイプとなっている。ピンタイプであるのでFleischmannのピンタイプであれば、Profiタイプにも交換できる。

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こちらは、Rocoの同じ64.311(製品番号:62202)である。

一見すると、車輪とロッド類の色合いが違うだけで、外観上はそれほど大きく差が無いように見えるが、詳しく見ると、かなりの違いを見いだせる。

ÖBB 64.311 (Roco 62202)

車体は、Rocoの方が細密度が高いが、これは Fleischmannの方が 80年代後半に発売された製品で、Rocoのは2006年製という時代差による金型技術の進展が関係していると思う。

Roco 62202 左面

電気的な部分は、Fleischmannと大きく異なる。

外側から見るものとして、Rocoのライト類は、LEDの定電圧点灯で、低速度から明るく点灯する。
点灯は進行方向前側のみ。

ライトはLEDの定電圧点灯

集電は、Fleischmannのは、動輪からのみ採取しているため、線路状態によってはギクシャクする場合があるのに比べ、Rocoのは、動輪と先輪・従輪からも採取して、しかも先輪・従輪は1軸にも係わらず両側から採取しているため、線路追従が良く非常にスムーズに走行できる。

先輪・従輪とも両側集電をするRoco 64.311

駆動系は、やや小ぶりの丸管形両軸モーターを使用し、片側にはフライホイル、もう片側には直接ウオームギアが付けられていて、駆動ギア形式が異なるが、3軸目の動輪を直接駆動し、1軸と2軸目にはロッドで回転を伝達させる同じ方式が採用されている。またギア駆動されている3軸目の両タイヤはトラクションタイプにしてあるため、Fleischmannより100g弱軽い200gの重量だが牽引力も十分にある、

Roco 62202に採用されているモーター

なお、中央の2軸目動輪は左右動2.5mm、上下動は0.5mm、1軸目と3軸目は上下動は無く、左右動は0.5mmと僅に動く。


Fleischmannの製品は、当方で入手したいと思った頃には絶版となっていて、通常の店からは入手出来なかったため、ウィーンの所属クラブで捜して貰ったところ、3ヶ月ほどで入手できたという連絡を貰い、2002年5月に納品されたものである。製品はショーウィンドウ展示品であったと聞いている。

Rocoの製品は、2006年の発売カタログでDBバージョンの発売予告があったので、そのうちÖBBバージョンも出るだろうと待機していたところ、2008年に天賞堂本店に入荷したのを見つけて同年3月に入手した。