欧州形鉄道模型紹介

模型車両を中心に、実車の情報を含めて紹介します。

ÖBB 93.1379

ÖBB 93(BBÖ 378)は、オーストリアで企画設計された標準軌の本線用タンク式機関車では、最後に製造された蒸気機関車である。f:id:eumodel:20190518002455j:plain

1920年代に入ってからは貨物輸送の需要が増し、従来(1898年)から使用されてきたkkStB178(BBÖ 178)では、連続走行距離(1回の給炭で走行できる距離)が不足してきた。

また、それまでに配置された大量の機関車の補修等が多くなってきたため、BBÖでは1925年にFloridsdorfに工場を建設し、補修および新制車輌の製造に備えた。

378形式は、178形式(車輪配置D)の全長を伸ばした形で先従輪を付け1'D1'として、軸重を11tまで下げることで支線への運用も考慮し、また石炭搭載量を178形式の約2倍搭載できるようにした。

378形式は、178形式の基本性能を流用したためプロトタイプ車輌の建造なしで、すぐに製造が始められた。また同時に、378形式の流用でシリンダー径を大きくし粘着引き出し性能を高めた(最高速度は40km/hにダウン)入換専用機の478形式(先従輪なし)が同時製造された。

378形式は1927年の1号機から1931年の167号機まで製造された。

1938年からDRBでは、378形式を93.1301~1467と改称した。f:id:eumodel:20190518003920j:plain

諸元
全長:11960mm
車輪配置:1'D1'h2t
運転重量:66t
整備重量:44t
シリンダー径:450mm
動輪径:1140mm
先従輪径:870mm
石炭搭載量:10t
水搭載量:3t
最高速度:60km/h
出力:700ps
牽引力:
平坦線(0‰)で 440tを60km/h
10‰の場合、150tを50km/h
25‰の場合、150tを30km/h

1944年になって93形式が1両製造された。これをÖBBは、93.1467の続番として93.1468(WLB-Maschine)としたが、のちに93.1500と改番した。

1955年に167両のうちの72両がギースルエジュクター(Giesl-Ejektoranlage)に改造され、30%効率がアップした。また93形式は、1965年までは全機安泰であった。

1969年12月31日現在の配置は以下の通り。
Linz 4
Sigmundsherb 4
Straßhof 4
Miatelbach 46
Puchberg 6
St.Pölten 15
Attnang-P. 2
Gmünd 19
Krems 10
計 107

1941年には、スロバキア国家鉄道(Slowakische Staatsbahn (SŽ ))が25両の93形式を発注し431.0形式とした。また1946年にはJDŽが24両を発注し53形式とされた。

形式をまとめると
BBÖ 378.01–167,
WLB 74,
JDŽ 53-001–028,
ÖBB 93.1301–1467、1500(元 WLB, DRB 93.1468)

両数は、
BBÖ: 167
SŽ/ČSD: 25
WLB: 1
JDŽ:28 (BBÖから)
ÖBB:128

製造は、1927–1931 (BBÖ ), 1944 SŽ, 1944 (WLB)

最終配置は、ÖBBが1982年である。f:id:eumodel:20190518002352j:plain

ÖBB 93(BBÖ 378)は、オーストリアにとって歴史的価値のある車輌であるため、現在でも、以下の車輌が保存(動態、静態保存)されている。

93.1326 (ÖGEG・動態)
93.1332 (NBiK - ケルンテン州のノスタルジックな鉄道・動態)
93.1335 (Waldviertler Eisenbahnmuseum Sigmundsherberg・動態)
93.1360 (私有財産、Technikmuseum Vonwillerka・動態)
93.1364 (Brenner & Brenner・静態)
93.1378 (DGEG - ドイツ鉄道歴史協会、鉄道博物館ノイシュタット/ヴァインシュトラーセ・動態)
93.1379 (Denkmal Bhf. Schwarzach-St. Veit・静態)
93.1394 (ÖGEG・動態)
JDŽ 53-003 (Denkmal Rogatec)
JDŽ 53-017 (Murska Sobota SZ Denkmal)
JDŽ 53-019 (Slowenisches Eisenbahnmuseum)
93.1403 (鉄道博物館Strasshofに貸し出されたオーストリア共和国の州鉄道コレクション・ギースル化・静態)
93.1406(Memorial Murska Sobota [Olsnitz]・静態)
93.1410 (LEL - Landseisenbahn Lippe eV・動態準備中)
93.1416(nskiželezniškimuzej、リュブリャナ鉄道博物館・静態)
93.1420 (Verein Neue Landesbahn・動態)
93.1421 (蒸気機関車会社Brenner&Brenner、Waldviertler Eisenbahnmuseum Sigmundsherbergに貸し出された・動態)
93.1422 (コミュニティAbsdorf・静態)
93.1434 (Martinsberger Lokalbahnverein・静態=将来動態を考慮中)
94.1439(Rogatec・静態)
93.1455(ÖGEG - オーストリア鉄道歴史協会・動態)
ČSD 431.014 (Eisenbahnmuseum Vrútky).


モデルは、Roco製の製品番号62240で、St. Veitに記念碑的保存(静態保存)されている機番である。

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ÖBB 93.1379

本体(上回り)は、水タンクがプラスチック製、ボイラーからキャブまでは金属ダイキャスト製。

駆動系は車体中央のボイラー内に後ろ向きに片軸のモーターが置かれ、動輪の4軸目(キャブ側)にセットされたウォームギア1段と平ギアの組み合わせで4軸目を回転させ、他の動輪へはロッドにて伝達する方式を採用している。トラクションタイヤは4軸目の両側を使用していてバランス良く、駆動力も大きい。f:id:eumodel:20190518004323j:plain

スムーズな曲線通過のために、動輪の1軸目が左右に1mm、2軸目と3軸目が2mm移動できる。ギアで駆動されている4軸目は、ほぼ固定され左右移動はしないようになっている。

集電は動輪の4軸目を除き、3軸の動輪の両側と先従輪からも取っている。f:id:eumodel:20190518004602j:plain特に先従輪は左右タイヤから両極の集電を行っているため、ポイントの死電区間を通過しても引っかかることなくスムーズに走行できる。f:id:eumodel:20190518004710j:plain

ライトは前側、後ろ側とも、進行方向のみ2灯点灯する。なおライトは定電圧点灯式となっている。f:id:eumodel:20190518004440j:plain

カプラーは、先・従輪の動きとは別にカプラーポケットが作動する方式である。カプラーは通常のカプラーポケット方式ではなく、上下にスライドさせながら取り付ける専用ヘッドタイプを装着する。画像ではカプラーを取り付けてはいないが、前、後とも装着できる。f:id:eumodel:20190518005535j:plain

この機関車は、動輪、先従輪ともボックスタイプの車輪を使っているのが特徴である。

パッケージはやや大型のもので、全体で550g、車輌のみでは473gである。f:id:eumodel:20190518005620j:plain

当社では、2007年9月に発注、2008年3月に納品されたものである。