欧州形鉄道模型紹介

模型車両を中心に、実車の情報を含めて紹介します。

BBÖ DT 1. 07

DT 1は、正式には Dampftriebwagen で、蒸気式鉄道車両という特殊な分野の車両である。DT 1のtriebwagenたるものは、独立した荷物室を備えていることである。

 一般的にTriebwagenそのものは、オーストリアはもちろん、スイスやドイツにも見られ、出力が大きく、片運転台または両運転台を備え、数両の客車を牽引可能な機関車的な電車が多い。一部にはディーゼル車もある。従ってDampftriebwagenではモーターやディーゼルエンジンを動力にするのでは無く、動力源として蒸気エンジンを使う車両ということになる。この種類の車両は、古い時代にいくつか見られるが、製品化されているものは非常に少ないので、カテゴリーを分けずにここではDampf-Lokのグループに入れて解説する。

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BBÖの時代、1930年代初頭には、急行列車の運行、大都市の郊外交通、支線などで普遍的に使用できる機関車が必要になっていた。BBÖのデザイン部門では斬新的な車両を企画設計し、1935年から1938年の間にFloridsdorf(ウィーンの車両工場)で20台を発注、1935年に10台が納品された、これがDT 1である。

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BBÖ DT 1

DT 1は、センターにキャブを置き、炭庫の後ろに広い荷物室を備えていた。急行用にも使える高速性能も備えていたが、センターキャブを生かした運用、すなわちウィーン近郊の通勤列車として、終端駅で機関車を移動せずに両方の方向に駆動するために、2台の客車の間に入れ時間短縮を図かる運用に使われた。

 

DT 1は、車輪配置が 1'b1' h2t で全長11200mm、動輪径1450mm、先従輪が870mmで完全対称だった。運転重量が44.8t、水は6.0m³ 、石炭は1.76tで、最高速度は100km/h。

 

ラゲッジルームと完全に閉じたキャブにより、単なる機関車(Lokomotive)で無く、Triebwagenになった。車輪配置 1'b1は、両方向に等しく良好な走行性を可能にした。調節可能なシャーシサスペンションは、車軸圧力を駆動車軸から部分的に伝達することを可能にした(13tから11tへ)。これは、給水量の減少と相まって、上部構造の弱い羽目板への使用を可能にした。

 

人員を節約するために、技術的にはワンマン操作の一部が実現された。また、最初の10台は、石油燃焼を装備していたが、意外と燃料費がかかったため、のちに節約のため、それらは石炭燃焼に切り替えられた。しかしそれと共にヒーターが必要で、ヒーター管理のためのスタッフが必要になって人員節約は出来なくなってしまった。

1938年にDeutsche Reich に組み込まれた際、20台の DT 1は、Class 71.5に改称された。

第二次世界大戦により、2台は失われたが残った18台が1945年にオーストリアに戻され、1953年のÖBBによりReihe 3071と再改称された。

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ÖBB 3071.17 Villach

3071の活躍は、Franz-Josefs-Bahnや Nordwestbahn、 Pressburger Bahn、Nordbahn、およびワイン地区のローカル列車に使用された。
約15年後の1968年5月に全車退職し、1台だけが、オーストリア鉄道博物館に保存された。
これを、1990年代初頭と1993年に再び使用可能に復元され、現在も鉄道博物館 Strasshof に置かれている。

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DT 1.07

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モデルは、Klein Modellbahn製(以下KMB)。製品番号は 5026。この形式のモデルは、2010年になってRocoから製品が出される(Sound仕様は2011年から)まで、KMBの独壇場で、KMBでは 2006年以降は生産されなかったので、国内ではほとんど見かけない貴重車両だった。

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Klein Modellbahn DT 1.07

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モーターは荷物室側に置かれ、ウォームギアと平ギアの組み合わせで、荷室側の動輪をギア駆動し、もう一方にはロッドで伝達する方式である。

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集電は動輪のタイヤから行っていて、動輪のスパンは36.5mm。先従輪はフリーで集電はしていない。重量は284g。

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2軸からのみの集電であるが、Roco-Line W. BeddingのTurnout(フログ角10.8°)では問題なく通過できる。

車体(プラ製)は煙突とキャブの間にある小さな突起を外すとネジが隠してあり、この短いネジを外すことで容易に外せる。

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車体には、なんの仕掛けも付いていない。窓は内側から窓枠に合わせた形のクリアなプラパーツが貼り合わせてある。

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下回りは、ウエイトを兼ねた金属ダイキャスト。モーター側から見るとダイキャストの表面は、少々荒れているように見える。

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実のところ、KMB製品のうち、1990年前後に製造された製品の金属ダイキャストの材質に問題があるものがあって、台枠が崩れる事故が発生している。崩れるまで行かなくても膨れてきたりすることで、プラ製の車体が割れてしまったりして、原形をとどめないひどい状態のも見受けられた。これらはKMBが倒産してしまった今では、残念ながら廃棄するしか仕方が無い。

この製品でも、モーターはこの台枠に直接ネジ止めされ、しかもギアケースを使用しない方式なので、台枠に異常が発生するとモーターが固定できず、ウォームギアとの関係が崩れるため使用不可能となってしまう。

当方では、このような状態で使用不能となったKMB製品が22両も出てしまった。

カプラーは、NEMのポケットを装着しているので、各種のものを使用できる。なお、先従輪とカプラーポケットは非連動となっている。

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ライトは、電球使用だが外観的には、前後とも進行方向に2灯点灯する。テールライトの設備は無い。

8ピンのコネクターを装備していることから2000年以降の製品と分かる。

なお、キャブ上の汽笛は取り付け前にパーツが折れてしまったので、未装着である。

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2010年に発売されたRoco製品を見ると、外観はもちろんであるが、モーターの位置や各パーツ類の形状など、KMB製品に酷似している。
KMBが倒産したときに、そこの技術者の6割ほどは、既成のメーカーに移ったという話しも聞こえているので、もしかすると金型を持って、Rocoに移ったのかも知れない。

当社では、2003年6月に発注、8月に納品された。
なお、この形式、DT 1 および3071を計5台所有しているが、幸いなことに、ダイキャストの破壊は起きていなく全車健在である。