欧州形鉄道模型紹介

模型車両を中心に、実車の情報を含めて紹介します。

BBÖ 1180.09

1180を紹介するためには、前身の1080の紹介が必要なのだが、以前所有していたモデルの1080は、全車、材質不良のため構造破壊をしてしまい、お見せできなくなってしまったので、ここでは資料説明のみとする。

kkStBの時代の1883年にオーストリアインスブルックとブルデンツを結ぶ アールベルク鉄道(Aebergbahnrampenstrecken)=オーストリアの東西を結ぶ唯一の山岳鉄道=が開通した。

当初はkkStBの蒸気機関車シリーズ73(0-8-0 貨物輸送用)、シリーズ80(E-h2 旅客用)、シリーズ180(E-n2v 旅客用)が使われていたが、アールベルクでは、長いトンネルと勾配区間が続き、また25パーミルの勾配も多くあることとから深刻な問題が発生した。乗客と乗組員はトンネル内の蒸気から凝縮する亜硫酸の不健康な影響にさらされた。また勾配区間において牽引トラブルも発生した。

これらの改善のため、アールベルクでは電化が促進され、1924年に電化が完了。また輸送量も増加の一途だったので、より高性能な電気機関車が要請された。

1924-1925年に電気機関車シリーズ1080が製造され、最初の1号機は1924年5月にBBÖに納品され、1925年までに20台が引き渡された。

 

1080は、E-w3t(0-10-0)の外枠ロッド式で、車体は運転席の前に小さな出っ張りのある凸型だった。全長12750mm、動輪径1350mm、出力は1020kwで最高速度は50km/h。重量は77tで軸重は15.4t。主に貨物用として使用された。

1926年と1927年にさらに9台が納品された。こちらは元の1080と長さ、動輪径、最高速度は変わらないが、出力が20%アップされ1260kwになり、重量は81t、軸重は16.3tとなった。また車体が角張った四角形に変化したため、1080.100とされた。1929年にはもう1台増備され、計10台となった。

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1180.09

これらはDRGの時代には、1080がE88.0に、1080.100がE88.1に改称された。

E88.05、10、11、16、18、20は、第二次世界大戦中にひどく損傷を受けた。しかしE88.1の方は全機損傷を受けずに生き延びた。

1953年にÖBBに戻ったとき、E88.0は1080に、E88.1は1180.01-10と改称された。また、破壊された1080を再建するプロジェクトが立ち上がり、残された機械を調べた結果、1080.05と11を再構築することになった。

この2台の再建機関車は、他の1080とは異なり圧縮空気ブレーキ、新らしい制御システム、改善された運転方向の切替装置、漏電リレーを装備した。

1080.005は、1951年11月15日に、1080.11は、1954年3月8日から運行を始めた。この2台の機械がそれの価値を証明したので、1180の全機と残りの1080も、全て再建されたとのこと。

1180.10は、1978年9月25日に事故で損傷を受け同年11月に廃車。
1180.02は、1983年に廃車。
1985年にコンピューターナンバーが採用され、上記2台以外はナンバーが変更になった。
1180 006が、1985年8月に廃車。
1180 008が、1986年5月に廃車。
1180 001が、1987年10月に廃車。

1180 007が、1990年11月に廃車。
1180 005が、1993年4月1日に廃車。
1180 003, 004, 009が、1993年5月1日に運用を離れ終焉。

1180 004は、ÖGEGにて動態保存。
1180 009は、Historische Electrolokomotiven(歴史的保存車両)に選ばれて、BBÖ時代の外観装備に戻され、動態保存機となった。庫は、Bludenz HEB。

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表題のモデル車両は、Klein Modellbahn製( 以降、KMB )の製品番号は、0385。

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1180.09


車体は、基本的にプラスチック製で、モーター押さえを兼ねたウエイトとライトの外部拡散を防ぐ役割を兼ねたウエイト部分および車輪を支える中枠のみがメタル製となっている。重量は440g。

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駆動系はモーターの両軸に直付けのウォームギアがあり、直結の平ギアにて車軸に伝達するが、1位側は前からの2軸を、2位側は後ろからの3軸に伝えるという、珍しい組み合わせになっている。

車体長は147mmと決して長くはないが、5軸のうち1番外側の2軸とセンターの( すなわち1個飛びで )軸のタイヤはフランジが無い。しかも外側の1軸目と5軸目はプラスチック製で、かつレール面には接触しない( 0.5mmほど浮いている状態 )したがって、レールの変化する谷型の勾配区間では一時的にレールに接触する( 駆動はギアにて常時されている )が、通常はダミーという扱いとなっている。

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ラクションタイヤは無く、集電は金属タイヤ全てから取る方式。

1軸目と5軸目のフランジがないのは急曲線への対応のためだとは思うが、通常の場合では、軸が左右に1.5-2mm程度移動出来るようにすることによりフランジがあっても問題はあまり発生しない。ところがこの製品の場合は、タイヤの外側に枠があって( 蒸気機関車のようにタイヤがむき出しではない )しかもロッドが組まれているため、軸の左右動を確保することが難しい。この理由から軸の左右動はさせずに、代わりにフランジを削り落として急曲線への対応処置をしたものと思われる。

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5軸とも上下の移動は出来ない=すなわち固定=であるため、両端の1軸、5軸のタイヤによって車体が浮き上がると中央の3軸のタイヤがレールから離れて集電できなくなるので、その対策として両端のタイヤをわずかにレールから浮かすようにしてあるのだと推測される。

それから、軸そのものは駆動用の平ギアで直接回転させているが、ロッドでも5軸が連結される構造になっている。そのことにより軸が回転しようとするとき、僅かでも狂いが生じるとロッドが引っかかり、回転できなくなったり、ぎこちない回転になったりすることがある。その度合いが大きいと全く回転しなくなることさえ発生する。

ロッドがわずかに曲がったりして、ロッドピンとの位置関係が0.01mmオーダーで狂うと、なにせピンが10本あるのでその調整は非常に困難な作業となる。

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当社ではこの形式の車両は複数在籍しているが、非常に調子よく回転=走行=するものもあるが、実にぎこちなく走行したり、走れなかったりする車両もある。

このメーカーの製品は、他のメジャーメーカーから比べると非常に当たりはずれが多く、特にある製作時期のものにそれが顕著である。国民性も違うし言葉も上手く通じないので、このメーカーしか作っていない形式車両については諦めて数多く購入するか、全く購入しないかの、どちらかの選択肢しかない。

ライトは前進方向のみ電球タイプの白2灯が点灯する。カプラーはカプラーポケットがNEMタイプのため各種のものに交換可能。架線集電可能だがDCCには非対応。

車体の分解の際は、片側4本のドア手すりを外す必要あり。モーターはウエイト上部の配線板に接続されたリード線を外す( はんだごてが必要となる )と簡単にウエイトが外れ、同時にモーターも外せる。モーターなしの状態だと、ロッド回りの調整は楽に行えるが、モーターが組み込まれると回らなくなる場合もあるので、全体の調整は難しい。


さて、ここまでのモデルの説明は、前のYahooブログで2006年に投稿したものを一部追記し載せたものであるが、2008年から2009年にかけて、このメーカーの他の形式車両で、金属台枠が曲がったり、割れたりする事例がいくつも見つかった。

モーターをこの金属台枠で固定していて、ウォームギアのBOXも省略している方式を採用しているため、台枠が変形したり、崩れたりすると走行が出来なくなる。

2008年時点で表題の車両も台枠の変形が見られ、それで無くても微妙な調整が必要な車両のため、結果的に走行不能になっていた。

所有する1080も同様で、所有機6台の全てが走行不能に。また1180は、4台の所有機のウチ、1180.01のみ正常で、他の3台は車輪さえ回らない状態になってしまった。

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一番ひどい状態の1080.103

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ロッドも強制的に曲げられている 1080.103


今回このブログ記事を作るのに辺り、走行不能な1180をチェックしてみたところ、車体=ボディ=は4台とも正常であることがわかった。

それで、走行が正常な1180.01(廃車車両)の足回りと1180.09(動態保存機)のボディを組み合わせることを思いついた。実機で確認した感じでは、01のと09の足回りは同じように見えるので、交換しても全く問題なさそうである。

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パンタグラフと屋根上の形状は異なる

唯一異なるのは、ライトで元の09のは電球タイプが使用されていたが、01のは黄色のLEDが使われていたことくらい。特に問題はなさそうである。

今気づいたのであるが、1180.09の運転室窓(正面)は、シリーズ1280のものとよく似ている。その意味で現在保存されている実機の1180.09とは異なるし、1080、1180の現役時代の実機の姿とも異なる。(KMBは解散してしまったので、理由は確認出来ない)

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当社への、09の入線は2002年7月、01は2004年10月、ともにクラブより購入した。

なお、1080は、Jägerndorferから2019年の発売予定が告知されているが、1180については、どのメーカーからも発売の兆しは見られていない。